年上なのに、翻弄されて
私がお腹にいる時だったらしいから,お父さんの顔は覚えてないどころか知らない。



「居心地が,悪かった?」

「そう言うことじゃないの。1年も一緒に暮らしてたらそれなりに情もわくし。何より忠仁(あつと)さん,再婚相手の方も誠実でいい人なの」



蓮は黙って聞いてくれてる。



「これまで働き詰めで,疲れて,隠れて泣いてたお母さんが新しい家族を見つけた。新婚の2人の間に私はどう考えても邪魔」



それにね……



「私が居ると,子供とかも作りづらいと思うし,お母さんは絶対欲しがってると思ったから」



お母さんのためとか思ってる訳じゃない。

ただ,ただね……



「ただ,私が勝手にお母さんに幸せになって貰いたかった」



幼い頃は,毎日必死に頑張るお母さんを見て,空気を見ずに泣いたり,駄々こねたりして,お母さんまで泣き出もして。

だから今度は,毎日笑顔でいて欲しい。



「呉羽……」  トゥルルトゥルリンッ♪


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