年上なのに、翻弄されて
蓮は躊躇うように口を開こうとしたけど,タイミング良く電話が鳴った。



「んもー。やぁっときた!」



ちょっと席を外すねと声をかけて,自室に向かう。



「もしもぉ~し? お母さんどぉしたの?」



久しぶりの電話。



「もしもし呉羽? お母さんね,呉羽に話があるの」



お母さんの声が弾んでる。

きっといい報告なんだ。

気付かれないようにほぅっと息を吐く。



「それはもう聞いてるよ。どうしたの?」



自然に漏れる笑み。

私の大好きな時間。



「お母さん,妊娠したの。5週目ですって!」



妊……娠? そっか。

お母さんは19で私を生んだ。

そんな若くて生活能力の低いお母さんを捨てるお父さんは普通に最低だけど,お母さんはまだ若い。

きっと心配要らない。



「わぁ~っすごい! 良かったねぇお母さん! おめでとう!」



つい,顔が綻ぶ。

忠仁さんと,お母さんの子供。

新しい,幸せな家族のかたち。
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