年上なのに、翻弄されて
蓮の手を,無意識の中きゅうっと掴んで,意を決した私は口を開く。



「ありがとう……えと,おとうさん」

「ははっ。参ったな。じゃあ,かわるからね」



電話の奥で,初美って,お母さんを呼ぶ声が聞こえた。



「もしもし呉羽? 何かいい忘れたことでもあった? ふふっ。忠仁に何を言ったの? 夜中なのに狂喜乱舞してて……すごいわよ?」



きょうきらんぶ……

あの真面目そうな顔と雰囲気からは上手くイメージ出来ない。



「うふふっ。あの人,意外と子供っぽい所があるの。あぁそれで,呉羽は何の用だったの?」



お母さんの口調は,いつも通り優しい。

蓮に言われなかったら,お母さんの隠してる気持ちなんて一生気付かなかった。



「お母さん,さっきは間違えちゃった。良かったねじゃなくて……初めての兄弟,私も嬉しい。ありがとう。これだけ言いたかったの,今度こそちゃんと寝てね,お母さん」

「ふふっ。忠仁がよろこぶ訳だわ! 呉羽,誰か素敵なひとが近くにいるみたいね? お母さん,娘息子の後,すぐに孫の顔まで見られそうで嬉しいわ」
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