年上なのに、翻弄されて
あと,他に言うことってあるかな?
ふと考えて、
「敬語もはずしてくれて良いし,私の事も下の名前でいいよ」
そんなことを言った。
「ありがとう呉羽。僕は碓氷 蓮。僕も蓮で良いし,食費もちゃんと払うから。よろしくね?」
この子の笑顔に耐性のない私は,赤面しそうになるのを必死に堪えて,呟く。
「よびすて……」
「ふふっ。だって,下の名前で良いんでしょう?」
この子,絶対私の反応を見て楽しんでる。
そう感じてキッとやや背の高い彼をにらみつけても,彼は嬉しそうに笑うだけ。
悔しい。
「じゃあね,呉羽。また明日。9時くらいに来るね。ハンバーグ,すっごく美味しかった。」
そう言って彼は帰っていく。
その姿を見て,私はその場にヘタリと座り込んだ。
「早まった? ……かもしれない!」
急に雰囲気の変わった彼と,その笑顔を見て,そう思った。
明日は土曜日。
次に彼に会うのも,そう遠くはない。