年上なのに、翻弄されて
いや,長いから。

早くひいてよバカ。



「分かった。じゃあ帰ろう」



そう言って,蓮は心配を無下にする私を笑って赦してくれる。

今なら分かる。

きっと,そう言うところなんだよ,蓮。

優しい,いつもと変わらない蓮の笑顔。

それは,お互い恋愛感情が無いと思ってるからこその笑顔でしょ?

最初の蓮を覚えてるから,ちゃんと分かってるよ。

どうしよう,わたし今無性に泣きたい気分。



「っめてっ。もう私にそんな風に触れないで……!」



蓮は私に左手を差し出した。

それはいつもの,私達の帰ろうの合図。

私はそれを,言葉と,半歩後ろに下がる行動をもって拒絶した。

しまったと思った。

蓮にとっては当たり前で,私も昨日までは右手を出すことで受け入れていた。

傷付けた……とも思った。

でも,私が気付いちゃったから,もうだめだよ蓮。

じゃないと蓮が困ることになるから。
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