年上なのに、翻弄されて
「呉羽,美味しい」

「そう」



泣いた跡を普段しない化粧で隠したかいって,蓮は何も言わない。

化粧っていっても薄化粧。

年頃の女の子なら何の不思議もないはず。

そう,思ってたのに……

食器を片そうとする私に蓮は声をかけた。



「ねぇ呉羽。呉羽が泣いたのは僕のせい?」

驚いて息が止まった。

それは上手く隠すことが出来たけど,それよりも危なかったのはお皿を落としそうになったこと。

それに……違う。



「違うよ。あと泣いてない」

「じゃあ何で僕の顔見ないの?」

「いつもだってそんなに見てないよ」

「そう言うことじゃないよ」



ガタッと音がして,蓮が寄ってきたのが分かった。



「呉羽,こんな時間に化粧して,何処に行くの?」



何処でも良いでしょ……そう言おうと私は反射的に蓮の方を向いた。



「! やめっ」
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