年上なのに、翻弄されて
「呉」 「失恋したの!! ……もう良いでしょ? 帰って」



ホントは嘘。

惹かれてただけ。

恋じゃない。

でも,恋になったらそうなる。

蓮は私の事好きな訳じゃ無いから。



「呉羽……」



蓮はいつかみたいに優しく壁に私を追い込む。



「呉羽。嘘だって分かってるけど,そんなこと言わないで」



どうしてそんなことで怒るの?

蓮は怒っていて,それでいて哀しんでいるようだった。



「も,いいから,帰って……疲れたの,お願い。蓮」

「分かった。でも……」



そう言った蓮は,真っ直ぐ私の唇にキスを落とした。



「夏休みは,僕の事だけ考えてて?」



そのまま家から去っていく。

蓮があんな妖しい笑みを浮かべるのは久しぶりだった。

私の事好きな訳じゃないのに,ああいう顔をするから困る。

私をこれ以上惑わさないで。

そう思うのに,胸の高鳴りと,顔の熱がひかない……
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