年上なのに、翻弄されて
「もっやだぁ~…うっふっぅうぅぅ」



夏休み前最後の放課後。

私は行く宛もなく,町中を走り回っていた。

何で気晴らしに出た先であんなの見なきゃいけないの……!?

今までで1番の量の涙が,自分の意思に関係なくボロボロと溢れていく。

まぶたにこびりついて離れないのは,やっぱり蓮。

ついさっき,蓮を見つけて私は引き返そうとした。

そしたら……



『蓮!』



知らない女の子が蓮を呼び捨てにして駆け寄って行った。

黒髪のストレートに真ん丸の目。

大人っぽくて,見惚れる程の美人だけど,蓮に向ける笑顔は少し幼くて可愛らしい。

その子は何の躊躇いもなく蓮に抱きついて,蓮もその子を優しく抱き止めた上に,愛しそうな笑顔を向けてその子の頭を撫でた。

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