バリキャリ課長の年上彼女は、一途な彼に翻弄される
「えぇ、営業部になかなか社長のお眼鏡にかなう人が来なくて」
「そうなんですね。じゃあ、僕が行こうかな」
「赤星さんなら、きっと即採用ですよ」
「そうですか?嬉しい。じゃあ、その時は宜しくお願いしますね」
2人で冗談を言って笑っていた。

客先の担当の人だから、始めは接待のような感覚でいたけど、赤星さんはそんなところを全く感じさせず、仕事でのハプニングなどで和ませてくれた。
つい、話が楽しく、お酒を飲み過ぎていた。
これはそろそろ帰らないと。

「もうこんな時間ですね。すみません、私そろそろ帰りますね」
「ここは僕が払いますから」
「いえ、この間のお詫びもありますし」
「お詫びは十分していただきました。今日は僕がお誘いしたので。じゃあ、次からは考えましょう」
次ある前提なんだね・・・
「じゃあ、お言葉に甘えて、ご馳走になります。ありがとうございます」

お店を出た時、思ったより酔ったみたいで、足がもつれて前のめりになった瞬間
「おっと、大丈夫ですか?酔い、覚ましますか?」
私は赤星さんの手に支えられた。
「いえ、大丈夫です。タクシーで帰りますね」
「その方がいいですね。僕もタクシーで帰るので、先に緑川さんところまで行きましょう」
「それは申し訳ないです。1人で帰れますので、大丈夫です。ありがとうございます」
「だって、勿体ないじゃないですか。それに心配ですよ」
「そうですか・・・じゃあ、ご一緒に」

何とか家の前までは意識を保ち、タクシー代をいくらか渡したけど
「帰り道ですから」
と赤星さんは受け取らず、私がマンションに入るまで見送ってくれた。

私は仕事の疲れと、お酒に酔ったこともあって、鞄を置いてソファに座りこんだ。
「こんな日もたまにはいいよね」
今日の会話を思い出しながら目を閉じると、そのまま眠りについてしまった。
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