バリキャリ課長の年上彼女は、一途な彼に翻弄される
私は、鏡の前でもう一度チェックして、家を出た。
「お待たせ」
スーツ姿でなく、Tシャツにチノパンツ姿の赤星くんは新鮮だった。
「仕事中じゃなくて、休みに会うって、やっぱりいいですね」
楽しそうな赤星くんを横目に助手席に座った。
「あっ、助手席でいいよね」
「もちろんですよ。僕は緑川さん専用席にしてもいいですけど」
「そんなこと、誰にでも言ってるんでしょ」
恥ずかしさを悟られないように、わざと悪戯な言葉を言ってみた。

「そうかもしれませんね」
えっ?そんなことない、そう言葉が返ってくると思ってた。
その言葉に動揺してしまった。
私、勝手に思い込んでいた。
思い上がってる自分が恥ずかしくなった。

「なぁんて、モテる人は言えるんでしょうねぇ」
冗談なの?本気なの?
そう聞くわけにもいかず、ただ笑ってその場を過ごした。

「今日はどこに行くの?」
「う~ん、勢いで言いましたが、決めてないんですけど。実は、この休みバッティングセンターに行こうと思ってたんですが、緑川さん、付き合ってくれますか?」
「へぇ~、バッティングセンター、よく行くの?」
「ストレス発散になりますから」
「じゃあ、行こうよ」
私達は2人でバッティングセンターへと向かった。
「緑川さん、打ちますか?」
「ううん、私見てるから、赤星くん打ってきてよ」
「じゃあ、遠慮なく」
赤星くんがバットを持って、構える姿、ボールが来ると、振り切ってボールが飛んでいく、単純なことの繰返しだが、その姿を後ろから見ているのが、凄く幸せな気持ちになった。

「どうでしたか?結構、様になっているでしょ?」
「うん、凄いね、赤星くん、全部当たってたよ」
「これでも野球部でしたから。緑川さんも打ってみませんか?」
「いいわよ。絶対当たらないよ」
「運動神経良さそうなのに」
< 41 / 89 >

この作品をシェア

pagetop