バリキャリ課長の年上彼女は、一途な彼に翻弄される
そうすると、ぬいぐるみが持ち上がった。
「緑川さん!上がりましたよ、ここからは・・・」
手を添えて、そのまま続ける。

私は背中の体温と手のぬくもりで、ぬいぐるみどころじゃない。
まるで学生の頃みたいにどきどきしている。
横に動いたぬいぐるみは、途中で落ちてしまった。

「あぁ~、落ちちゃった。残念でしたね、緑川さん」
赤星くんの手と体が離れて、ほっとしたのと、もう少しそうしていたかった自分がいた。
「あ、うん、落ちちゃったね。でも、楽しかった」
私は熱くなった顔を見られないように、直ぐにその場を動いた。

「緑川さん。最後にあれ、一緒に撮ってくれませんか?」
赤星くんが指差したのはプリクラだった。
「赤星くんと?」
「僕だけ撮ったプリクラ、見たいですか?」
「でも・・・」
「いいじゃないですか、せっかくですから」
半ば強引に連れて行かれて、撮ることになった。

「最近のはすごいですね、えーっと、どうするんだろう・・・」
2人でああだこうだと撮っていて、中には大笑いしているプリクラも撮れた。
「じゃあ、最後は」
赤星くんは、私の顔の横に並ぶように、かがんで、まるで恋人同士のようにデコレーションした。

赤星くんと撮ったプリクラ。
私、楽しそうだ。
「今日は楽しかったです。学生に戻った気分でしたよ。そろそろ帰りますか」

空が暗くなりかけていた。
少し歩くと、海が見える広場に着いた。
少しずつ夜を迎えていく。
過ぎていく時間を惜しむようにゆっくりと2人で歩いた。
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