バリキャリ課長の年上彼女は、一途な彼に翻弄される
「何かあったんですか?赤星さんのあんな寂しそうな顔、見たことありませんよ」
「そんなの私が知るわけないでしょ」
景山くんに当たっても仕方ないのに・・・
景山くん、ごめんね。

「あぁ、疲れた・・・」
赤星くんのことを考えないように、一心不乱に仕事を進めた。
帰りに1人で部屋に残っていると、赤星くんが来るかもしれない。
皆が帰った後は、書庫で仕事を進めた。

誰も居なくなった部屋の電気を消し、会社の外に出ると、前に赤星くんが歩いているのが見えた。
「赤星さん!待って下さい」
その後ろを追いかけて、声を掛けた人は、相田さんだった。
相田さんは赤星くんに駆け寄り、腕を組んだ。
胸がぎゅっとなり苦しい。

それ以上2人を見ることが出来ず、振り返り、反対方向へと歩き出した。
「こんな気持ちじゃダメだな・・・」
心を落ち着かそうと、ゆっくり歩いていると、しばらくして携帯が鳴った。
赤星くんからだ。
相田さんと一緒にいるのに・・・
サイレントモードに変えて、鞄に戻した。

さっき見た腕を組んだ2人の姿を思い出すだけで、胸がざわつく。
あの後、どこに行ったんだろう。
「だめだ・・・まだゲームに負けている」
上を見上げると、顔にランダムに水滴が落ちて来た。

「雨か・・・」
折りたたみ傘を鞄から取ろうとしたけど、今日に限って入っていなかった。
「ついてないなぁ・・・でもちょうどいいか」
溢れ出る涙を雨がかき消してくれた。

携帯が何度も震えている。
「もう、いいでしょ。あなたの勝ちよ・・・」
そう思いながら、ようやく着いたマンションの前に人影があるのが見えた。
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