バリキャリ課長の年上彼女は、一途な彼に翻弄される
「赤星くん・・・どうしてここに?」
「昨日から緑川さんの様子がおかしいし、何度電話してもでないし。濡れているじゃないですか」
慌てて傘を差してくれた。
「どうしたんですか?」
「傘忘れただけよ。何でもないわ」
「そんな顔して・・・ちゃんと言って下さい」
「何でもないって!」
私は、苛立ってた気持ちを赤星くんにぶつけてしまった。
すると、赤星くんが私を抱き寄せた。
「僕は緑川さんの笑顔を見るために青羽に来たのに、そんな悲しい顔しないで」
雨が降って良かった。
私の涙は赤星くんにはわからない。
「とにかく、風邪引きますから、家まで送らせてください。いいですね」
「本当に大丈夫だから」
「大丈夫じゃないでしょ!泣いてる緑川さんをほっとけない」
どうしてわかったんだろう・・・
雨でわからないはずなのに・・・
「行きますよ」
私の肩を抱きながら、一緒に歩き出した。
赤星くんは何も言わず、玄関まで送ってくれた。

鍵を鞄から出し、鍵を開けようとするけど、手が震える。
「震えてるじゃないですか」
握られる赤星くんの手は温かい。
どきっとすると同時に胸が苦しくなる。
「緑川さん、こっち見て」
今の顔は見せれない。
いつものように気丈に振る舞うことも、作ろうこともできなかった。
「こっち、見て下さい」
赤星くんが私の肩を掴んでゆっくりと向かい合う。
< 53 / 89 >

この作品をシェア

pagetop