バリキャリ課長の年上彼女は、一途な彼に翻弄される
次の日の木曜日、お昼前に二海堂さんが来て、僕を呼び止めた。
「今から泊りの出張って聞いて、会えないと思って話をしたくてね。まだ時間ある?」
「えぇ、大丈夫ですよ」
「赤星くん、奈織と付き合ってるんだって?」
「はい、今、僕の彼女です」
「そうみたいだね」

余裕だな。牽制したのに。
この人に勝てる気がしない。
「実はね、今回は仕事以外に、もう一度奈織に僕とのこと、考えてもらおうと思ってね。それでここにも顔を出したんだよ」
「えっ?」
「僕の仕事も落ちついて軌道に乗ったし、奈織も課長としての責任を果たせているようだし。一度ニューヨークに来てもらって、向こうで奈織が暮らすことを、イメージしてもらおうと思ってね」

はぁっ?
何勝手なこと言ってるんだよ。

「奈織には自分の気持ちを伝えようと思っている。明後日の土曜の便で戻るよ。奈織には、明日、チケットを渡すつもりだ」
「土曜日に連れて行くってことですか?」
「突然帰ってきて何を言うんだと思っているよね。でも、僕は2年前、奈織を諦めたわけじゃない。奈織が課長として覚悟を決めたなら、僕も足下を固めて迎えにくると覚悟を決めた。この2年は必死だったよ」
二海堂さんは、真剣な顔で僕に続けて話した。
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