バリキャリ課長の年上彼女は、一途な彼に翻弄される

奈織さんが、僕の横に座った。
「ねぇ、昨日電話で言いかけた、明日の土曜日のことなんだけど」

それ以上聞くのが怖くなった。
奈織さんが選んだ答えだ。
それでも、きっと奈織さんの口から聞いたら、平常心ではいられない。

「奈織さん・・・」
「ん？」
僕は奪うように口づけをして、奈織さんを抱きしめ、そのままベッドへと抱えて行った。
これが最後かもしれない。
そう思うと泣きそうになる。
でも、奈織さんが選んだことを、僕が引き留めて奈織さんの笑顔を奪っても幸せになれない。
二海堂さんは男の僕から見ても文句のつけようのない人だ。
奈織さんの隣には二海堂さんが似合う。

「拓真？」
心配そうに僕を見つめる奈織さん。
愛おしい。離したくない。
「奈織さん、愛してます」
泣きそうなのを悟られないように、激しく奈織さんを求めた。

奈織さんから漂う香り、僕を捉える妖艶な瞳、
柔らかな唇、なめらかな肌、
僕を受け入れて乱れる姿、突き動かすごとに耳に響く声、
全身で感じる奈織さんの熱、全てが愛おしく五感に刻む。

疲れたのか、奈織さんは僕の腕の中で、眠ってしまった。
「奈織さん・・・」
僕は奈織さんを抱きしめながら嗚咽を堪えた。

「行くからね」
夢の中の奈織さんの声・・・
行かないでください。僕の傍から離れないで。

外の明るさで、目が覚めた。
僕の腕の中に、奈織さんはいなかった。
起き上がる力もなく、日が差し込む窓から空を見ていた。
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