バリキャリ課長の年上彼女は、一途な彼に翻弄される

1人のお酒に酔ったサラリーマン風の男性が直ぐ傍に近づいてくる。
「人を待ってますので」
と後ずさりしていると
「僕の彼女に何か用ですか？」
私の肩を抱き寄せて威嚇したのは、やっぱり拓真だった。
「す、すみません」
男はそそくさと去って行った。

「奈織さん、相変わらず声掛けられますね」
「ごめんね。遅くなって」
「大丈夫ですよ。少しだけ向こう側に行ってたんで。じゃあ、少し歩きましょうか」
2人で歩いていると、イルミネーションの通りに出た。

「わぁ、イルミネーション・・・綺麗だね」
「綺麗ですよね。いつもは忙しくてこんなにゆっくり見ることもなかったんですが・・・」
「私も。こんなに楽しみながらゆっくりと歩くなんて・・・」

2人の周りを沢山の人が通り過ぎるのに、周りは目に入らず、私達の空間だけが時を刻んでいるように思える感覚だった。

しばらくすると、大きなツリーが飾られていた。
「奈織さん、覚えていますか？僕と出逢った頃のこと」
「はっきりと覚えているわよ。だって、落とし物拾ってくれた人を叩いたんだから」
「僕は奈織さんを会社で何度か見たことがありました。そして、偶然にもあの日、衝撃的な出逢いをした」
拓真は私の手を取り、大きな手で包み込む。