絶体絶命の聖女候補、幼女薬師になってもふもふと聖騎士団をお助けします!
(ここは、薬屋さんかな? アルマ薬店?)

 中年女性がいるカウンターの上には木彫りの看板がぶら下がっていた。看板には薬屋を意味する薬草とともに、〝アルマ薬店〟と彫られている。

「わかった。この後またけが人が運び込まれてくるかもしれないから、処方しておいてくれるか?」
「わかったよ」

 女性は男性騎士の要請に頷く。
 男性騎士は女性の返事に満足したようで、くるりと向きを変えた。

(こっちに来る!)

 別に何のやましいこともないけれど、なんとなく隠れてしまった。柱の陰で息を潜めている私の前を、男性が通り過ぎる。手には薬を持っていた。

(いっちゃった……)

 男性の後ろ姿を見送ってから、私は背後を振り向く。
 そっと薬店に近づくと、カウンターへの扉の合間から、先ほどの女性が薬の調合をしているのが見えた。薬草特有の青臭い香りが、すんと鼻孔をくすぐる。女性の目の前の台には、こんもりと薬草が積まれていた。

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