絶体絶命の聖女候補、幼女薬師になってもふもふと聖騎士団をお助けします!
 気のせいだろうか。自分の手元、調合中の薬が鈍く光ったような気がした。
 暫く擦り続けると、すり鉢の中は見事な粉状の薬になる。

「これ、どうやって飲ませようかな?」

 私は出来上がった薬を見つめて独りごちる。普通であれば水に溶かしてそのまま飲み込むのだけれど、今意識がない聖獣にどうやって飲ませればいいだろう。

[お口にぐいって入れればいいよ]

 ガーネが名案が思いついたとばかりに人差し指を立てて見せる。

「お口にぐいって……」

 それは、この聖獣の口を無理矢理開けて、口の奥に薬を突っ込み水で押し流すということだろうか。確かにそうすれば飲ますことはできるけれど……。

 聖獣は頭だけでも私が両腕を回しても届かない位のサイズがあり、少しだけ開いた口元からは鋭い牙が見える。もしも噛まれたら、きっと私の腕などちぎれてしまう。

(どうしよう……)

 迷っていると、今度はベラが[アリシア、どうしたの? 聖獣さんを助けてあげて]と言う。

「う、うん」
「聖獣は人を襲ったりしないにゃ。心配しなくても大丈夫にゃ」

 じっと私達の様子を見守っていたイリスが、口を開く。

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