絶体絶命の聖女候補、幼女薬師になってもふもふと聖騎士団をお助けします!
 ブルノ大司教は大司教だけあり、ここセローナ地区で一番神聖力が強い司教だと言われている。けれど、いつもの神聖力が漲る感じがなく、どことなく疲労感が見えた。

「そうかもしれませんね。最近、神聖力をずっと使いっぱなしです」
「神聖力を?」
「ええ、そうです。この世界は定期的に浄化しないと瘴気が満ちてしまうことをアリエッタは知っていますか?」
「はい」

 ブルノ様がお薬を置いた長椅子の隣に座ったので、私も通路を挟んで反対側の長椅子にブルノ様のほうを見るように横向きに座った。瘴気のことは最近イラリオさんからも聞いたし、セローナ地区はアメイリの森があるという地域柄なのか、学校でも習う。

「最近、瘴気が濃いですね。本来であれば聖女様の祈りで一気に浄化されるはずなのですが──」

 聖女様と聞いて、心臓がどくんと跳ねるのを感じた。

「聖女様は、まだ決まっていないのですか?」

 動揺する気持ちを隠し、ブルノ大司教に尋ねる。

「いいえ。決まったと聞いています。チェキーナ大聖堂が推薦したお嬢さんだそうですよ」
「そうですか」

< 185 / 312 >

この作品をシェア

pagetop