絶体絶命の聖女候補、幼女薬師になってもふもふと聖騎士団をお助けします!
 アリエッタは自分の手を突き出すようにザグリーンに向ける。よく見ると、小さなリボンを持っていた。赤とピンク色の二色使いで、中央にビーズが縫い付けられている。

「いらぬと言ったらいらぬ!」
「そんな……。せっかくふたつ買ってきたのに!」

 そこで状況をようやく理解してきた。
 アリエッタはザグリーンに付けるためのリボンを買ってきたらしいが、ザグリーンはそれを付けることを拒否したようだ。

 アリエッタのいう『ふたつ買ってきた』というのは、どうやらザグリーンとイリスの分のようだ。イリスの首元には既に小さな赤いリボンが付いている。昨日まではなかったはずだから、今日アリエッタが付けたのだろう。

 ちらりとザグリーンに目を向けると、金の瞳としっかりと目が合った。不機嫌な気持ちがビシビシと伝わってきて、ここで俺がリボンを付けることを後押ししたら契約解除と言われかねない雰囲気だ。

 俺はごほんと咳をする。

「エリー。リーンは勇敢な雄の聖獣だ。このリボンは少しばかり、その……、可愛らしすぎるんじゃないかな」
「…………」

 アリエッタの目にじわりと涙が浮かぶ。
 ぐっ、俺が女と子供の涙に弱いと知っての狼藉か。ダブルで来やがった。
 しかし、ここは心を鬼にしなければ!

 俺はアリエッタ擁護派に揺らぎそうになる自分の気持ちを叱咤する。

< 193 / 312 >

この作品をシェア

pagetop