絶体絶命の聖女候補、幼女薬師になってもふもふと聖騎士団をお助けします!
「奴からの手紙には何と?」

 侍女により用意された紅茶を一口飲み、ヴィラムに尋ねる。

「セローナ地区全体で、神聖力の結界に綻びが生じていると」

 それは先ほど、あの忌ま忌ましい聖女のところに行って聞いてきたばかりだ。

「聖なる森と呼ばれるアメイリの森でここ最近魔獣が増えているそうです。イラリオによると、結界が緩んで瘴気が発生することにより、それを糧にしている聖獣が魔獣になっていると」
「聖獣が魔獣になる? ばかばかしい」

 カスペルははっと鼻で笑う。
 聖獣とは神聖力を持った聖なる獣。魔獣は瘴気を纏う、邪悪な獣。
 このふたつは完全に対となる存在であり、同じものであるなど到底理解しがたい。

「私も信じがたいと思ったのですが、聖獣から聞いたようなのです」
「なんだと? 遂にあやつ、気が触れたか?」

 聖獣から聞いたなど、滑稽無稽な。聖獣はそもそもその個体数が非常に少ない上に、喋る程の上位種は殆どいないはずだ。

「聖獣と契約したようなのです」
「何……?」

 頭をガツンと殴られたような衝撃を受ける。

「イラリオが、聖獣と契約しただと?」

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