絶体絶命の聖女候補、幼女薬師になってもふもふと聖騎士団をお助けします!
 私は至極まっとうな質問をする。聖騎士団の団長であるイラリオさんと一緒に住んでいる私ですら一切知らない情報なのに、聖騎士団と全く無関係のディックがなぜそんなことを知っているのだろう。

「あー、俺んちってここらで一番上等なホテルだからさ──」

 ディックによると、数日前セローナ地区の聖騎士団からホテルの全室を貸し切りにしたいと打診があったそうなのだ。当然、既にいくつかの予約が入ってしまっていたため、全室は無理だと断ったらしいのだが、全室でないと警備上困ると強く言われ、それを受け入れたらしい。

「代わりのホテルを探すのとか、お客さんに事情を説明する手紙を書くのとかでてんやわんやだよ。で、誰が来るんだかは知らないけど、相当偉い人が来るんじゃないかって」
「ふーん、なるほどね」

 ディックのいう〝数日前〟と私が聖騎士団の事務所の前で近衛騎士を見た日は一致している。つまり、あの近衛騎士は誰か王室関係の人間がここに来るという先触れだったのだろう。

(だから忙しそうだったんだ。誰が来るんだろう?)

 とても気になるけれど、イラリオさんに聞いたところで業務上の機密だと言って教えてくれないだろう。

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