絶体絶命の聖女候補、幼女薬師になってもふもふと聖騎士団をお助けします!
「ディック、教えてくれてありがとう」
「いや。これくらいのこと、大したことないって」

 ディックは頬を赤くして照れたようにはにかむ。

「はい、皆さん。授業を始めますよ」

 私達の会話は教室に入ってきた先生のかけ声と共に終わったのだった。

    ◇ ◇ ◇

 ──一体、セローナ地区に誰が来るのか?

 そんな私の疑問は数日後に解決した。

 長い馬車の列と共に、ヴィラム殿下と聖女であるルイーナ様がセローナ地区へと訪れたのだ。

 到着の日はイラリオさんは警備の全責任者として、いつもよりずっと朝早くに家を出た。だから、私の学校への送りはザグリーンがしてくれた。

「わあ、凄い人だね」

 学校が終わった時間帯がちょうど到着の時間と被っていたようで、大通り沿いには警備でたくさんの聖騎士団の団員さん達が立っていた。

 聖騎士団の団員さんが何人いるのかは正確には知らないけれど、ほぼ総動員しているのではないかと思うような規模だ。更に、王太子殿下と聖女様がやってくるという噂を聞きつけた町の人までもが集まっているので、そこは祭りさながらの人手だった。
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