絶体絶命の聖女候補、幼女薬師になってもふもふと聖騎士団をお助けします!
 ああ、そうかもしれない。兄上であるカスペル陛下は、いつだって徹底して俺を煙たがっているように見えた。こんな無理難題を押しつけることもあり得る。

 俺は努めて平静を装い、ヴィラム殿下の説得を試みることにした。

「アメイリの森の状態を調査するところまでは異論ありません。ただ、魔獣を生け捕りにするのは危険です。彼らは理由なく人を襲いますし、存在そのものが瘴気をまき散らします。そんなものを生きたままにし、さらに王都に連れて行くなど言語道断です」
「…………」
「聖女の加護があれば大丈夫と書いてありますが、そんな保証はどこにもない。俺はみすみす自分の部下達に死の危険と隣り合わせの行為をさせ、さらに王都にまで瘴気を運ぶような愚かな行為はしたくない」

 俺の発言は反逆罪に取られて大事になっても仕方がない危険性をはらんでいた。カスペル陛下の命令を〝愚かな行為〟と言い切ったのだから。

 カスペル陛下からの命令は端的に言うと、『アメイリの森の聖獣と魔獣の状況について調査してこい。その際、魔獣を生け捕りにして連れて帰ってこい。その魔獣は聖女により本当に聖獣に戻るか確認する』というとんでもない内容だったのだ。

 けれど、ヴィラム殿下なら大丈夫だろうと半ば確信があった。ヴィラム殿下は予想通り、俺の無礼な発言を追及せずに、今後のことだけを話した。

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