絶体絶命の聖女候補、幼女薬師になってもふもふと聖騎士団をお助けします!
「父には、『善処したが魔獣を生け捕りにすることは難しかった』と伝えましょう。私が事情を説明すれば、怒りはするもののどうこうなることはないはずです」
「そうして頂けると助かります」
「わかりました。イラリオには苦労をかけて、申し訳ない」

 ヴィラム殿下は唇を噛み、俺に謝罪する。俺は俯くヴィラム殿下の頭頂部を見つめフッと笑った。

「苦労しているのは、あなたのほうでしょう?」

 ヴィラム殿下は現国王であるカスペル陛下の息子で、今年で二十歳になる。幼い頃から非常に聡い王子で、歳が近い俺のことを慕ってくれた。

「いつからか、あなたはわざと愚かで傀儡(かいらい)な王子を演じている。そうしないと、周囲に災難が起こると知っているからだ」
「…………」

 ヴィラム殿下は何も答えなかった。
 この沈黙が、それが真実であることを物語っている。

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