絶体絶命の聖女候補、幼女薬師になってもふもふと聖騎士団をお助けします!
お喋りをしながらだと、片道三キロの距離はあっという間だ。
(あれ? お客さん?)
見慣れた赤い屋根を見つけてほっとしたのも束の間、私はおやっと思った。家の前に、ひとりの男性が立っていたのだ。
(誰かしら?)
遠目にその男性を見つめる。とても背が高く、がっしりとした精悍な印象の男性だ。
(あれは、騎士様かな?)
黒い上着には金色の肩章と飾緒が付いており、袖口にも金色の飾りがぐるりと一周入っている。腰には立派な剣を帯剣しており、町に出たときに時折見かける騎士が着ている服と似ていた。けれど、少しデザインが違う。
「こんにちは。お薬をお求めですか?」
おずおずとその男性に声をかける。私は普段、薬師として生活している。この男性も、何か薬を求めているのかと思ったのだ。
玄関の前に立ち、どこか遠くを眺めていた男性は私のかけ声にはっとしたような表情を見せた。