絶体絶命の聖女候補、幼女薬師になってもふもふと聖騎士団をお助けします!
 そのとき、奥からカツンと音がした。

「精霊達が大歓迎しているので誰かと思えば、イラリオ殿下ではございませんか」

 私ははっとして声のした方向に目を向ける。そこには、白髪頭に長いおひげを生えした穏やかな雰囲気のおじいちゃんが立っていた。くるぶしまである白い服の胸にはここの大聖堂の入り口に描かれていたのと同じ、花の印が入っている。

(殿下? なんで、イラリオさんが殿下なんだろう? それにあの印、どこかで見た気が……)

 どこで見たんだっけ?と考えるけれど思い出せない。
 横にいたイラリオさんが懐から何かを取り出して、おじいちゃんに差し出した。

「〝殿下〟は止めてください、ブルノ大司教。ご無沙汰しておりました。お預かりしていたこれをお返しします」

 私はイラリオさんの手元に目を向ける。そして、はっとした。

(そっか、あのときの花だ)

 そのおじいちゃん──ブルノ大司教の胸に描かれた印は、イラリオさんが持っていた聖石が反応したときに現れた花と一緒なのだ。大きな四枚の花びらを持った、ゴデチアに似た花。
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