お姉さん、泣いて
夕立であれば少し待てば雲が通り過ぎるとは言うものの。
あいにく、今日は帰ってからあったかいご飯を食べたあとにお気に入りのバラエティ番組を観るという外せない用事がある。
満腹状態の最高の状態になってから観ると決めているが……
今すぐ帰らないとご飯を食べる時間がなくなってしまう。
日々の学校生活で感じるストレスを開放してくれる唯一の俺の楽しみを、天気なんかに邪魔されてたまるか。
背に腹は変えられない。
制服と靴が大惨事になって母さんに怒られるとしても即刻帰らないと。
意を決して土砂降りの雨の中に飛び込もうと、ぎゅっとリュックの紐を握りしめたとき。
「───あの、この傘。良ければ使って」
無謀なことをする俺を引き留めるかのように。
ちょうどコンビニからでてきたであろう一人の若い女の人が、高そうな品のある傘を差し出した。