色づいて、濁り、落ちていく
「もっとこっち来て?」
グッと引き寄せられ、その勢いで氷河の胸に顔がぶつかった。

「ひやぁっ!?ご、ごめんなさい!」
慌てて離れる美冬。
「ううん、僕こそごめんね。加減がわからない。
そんな強く引っ張ってないのに、女ってこのくらいの力でこんなに動くの?
やっぱ、弱いね」
「そうですね。力では男性には敵いませんね、確かに」
「僕が守ってあげる。恋人だったら、男が守るの当たり前だよね。まだ恋人じゃないけど」
「フフ…じゃあ、私は氷河さんの為に何ができるのでしょうか?」
「美冬の心が欲しい。
傍にいてほしい。
離れないでいてほしい」
「わかりました。できる限りのことをします」
そう言って微笑むと、氷河の手が頬に触れた。

「キス…したい」
「え?そ、それはちょっと…」
「ダメ?」
「ご、ごめんなさい」
「そっか。恋人にならないと無理か。
じゃあ、美冬とセックスしたいってのも恋人にならないとダメ?」
「え!!?セッ…!?
む、無理です!!」
「わかった。我慢する。
でも僕は今まで恋人いたことないけど、色んな女とキスもセックスもさせられてたよ」
「え?好きな人がいたんですか?」
「ううん。“させられてた”って言ったでしょ?
自分の意思でしたいと思ったことないよ。
でもね、美冬にはシたいって思ったの。
だから聞いたの」

「……氷河さん…」

「え…なんで、泣くの?意味がわからない」
美冬は自然と涙が出ていた。
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