色づいて、濁り、落ちていく
氷河は着替えると、寝室を出てソファに座り煙草を吸う。
その間に美冬も寝室で着替えた。
そして氷河の横に座り、煙草を吸うのを見つめる。

「氷河さんは煙草、いつから吸ってるんですか?」
「んー?中学の時」
「え!!?」
「変?」
「変と言うか…ダメですよ!」
「え?なんで?」
「ほら、見てください!
煙草は20歳からですよ!」
煙草の箱を氷河に見せる、美冬。

「ほんとだ。でも仁士が中学生になったら色んなことを経験して、覚えるべきだって言ったから」
「仁士?あー、峰原さんですね」
峰原 仁士は若頭補佐で、氷河と三つしか変わらない33歳の男。
氷河に煙草や喧嘩、女の扱い方など…沢山のことを教えた男だ。

「他にも色々教えてくれたよ。
喧嘩のし方とか、セックスも…」
「え?じゃあ、氷河さんの初体験って…」
「中二の時。いきなりホテルに連れて行かれて、知らない女に色々教えてもらった。どんな風にすれば女は気持ちいいとか…なんか色々」
「す、凄い…」
「酒は高校卒業して、祝宴があってその時から飲んでるし」
「氷河さん、凄い。
なのに“感情”に関しては誰も教えてくれなかったんですね…」
「うん。
親父も仁士も、そんなの邪魔だって言って教えてくんなかった」
「まぁ…感情って教わるものではないので、きっと氷河さんも30年間生きてきて、色んな感情があったと思うんです。
でもそれがどんな感情か、興味を持たないようにさせられてたんでしょうね」

「そうだね。でもこの愛しいって気持ちは今まで感じたことないよ」
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