色づいて、濁り、落ちていく
それから美冬は、組員達の家事を手伝ったりして日中を過ごし、氷河が帰ってくるまで雑誌を見ていた。

【この夏は大好きな彼と、熱い夏にしよう!!】
という見出しの雑誌。
ワンピースや水着等が沢山特集されていた。
美冬はクローゼットの中の自分の服を見る。
ここまで我慢させていた氷河の為に、せっかくなら可愛くして迎えいれたい。
そう思い、仁士の部屋へ向かった。

「峰原さん、いますか?」
「んー?どうした?」
「お買い物に行きたいんですが…」
「いいよ。用意して玄関で待ってて!」
「はい。よろしくお願いします」
一人での外出は禁止されている、美冬。
基本的には氷河がいない時の外出もダメなのだが、仁士と金藤とだったら出てもいいと言われている。

仁士と金藤は、氷河が唯一信頼している部下だからだ。
「お待たせ。ちなみに何を買いに行きたいの?」
「服です」
「ん。わかった」
仁士が高級車の後部座席を開けてくれ、美冬に手を差し出す。
「あ…すみません」
仁士の大きな手を小さく握り、乗り込んだ。
「ほんっと、いつになっても慣れないよね~」
運転席に乗り込んだ仁士が言う。
「え?」
「姫扱い」
「え?」
「若に対してもだけどさ、ドアを開けてもらうとか、手や腰を支えてもらうとか…そうゆうの!」
「だって普通はそんなことしないですよね?」
「そうだな。
でも…この世界は“普通”じゃないよ」
「そうですよね…」
確かにそうだ。
氷河に出逢うまで経験したことない事が、ここでは“普通”に起きている。

「俺達にとって、オヤジは“王”若は“王子”美冬は“姫”だよ。
だから、もうそろそろ慣れないと…!」
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