色づいて、濁り、落ちていく
「嫉妬…
氷河さんといること、辛くはないです。
でも氷河さんには、気持ちを真っ直ぐ伝えないと伝わらないので大変とは思ってます」
「そうだな。
あの方に、誤魔化しはきかない。
美冬に出逢って、様々な感情が芽生えているから毎日混乱してるみたいだし」
「そうでしょうね。
きっとどんな感情も、初めての感情ではないんだと思います。ただ、今まで押し殺してきたから、わからないだけで…」
「二人が付き合い始めて少し経った頃、若がヤキモチを妬きだしたんだ。
美冬が俺や峰原の兄貴と話してるのを見て“美冬は、仁士や金藤のことも好きなのかな?僕は美冬だけなのに”って呟いて寂しそうにしてた。
可愛いなぁって見てたんだが、いつの間にか……嫉妬に変わってた。
兄貴と最近話すんだが、美冬への愛情が異常に強くなってる」

プレゼントを購入し戻ると、玄関前で氷河が待っていた。
美冬の姿を認めると、タタタ…と走ってきて腕の中に閉じ込めた。
「やっと帰ってきた…
遅いよ!どこまで行ってた!?」
責めるように言う、氷河。

しかし事前に購入していたのを取りに行くだけなので、ほんの30分程度しかかかっていない。
「え?30分くらいですよ。そんなにかかってないかと…」
「は?30分!?そんなわけない。
三時間の間違いだ」

「さ、三時間!?」

そんなわけない。
ちょうど車に乗り込んだ時、ラジオで12時の時報がなっていた。金藤と“お昼ですね。お腹すいたね”等と話をしたからはっきり覚えている。
そして今、12時32分。

【若の美冬への愛情が異常に強くなってる】

美冬も含め、ここにいる組員全員が思っていた。
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