色づいて、濁り、落ちていく
情が濁りだす
嫉妬心とは、本当に厄介だ。

ママ達の気持ちが痛い程わかる。
逆なら、美冬も恨んでいたかもしれない。
きっとママ達は、店に来た氷河と少しずつ信頼関係を築き、誕生日パーティーに呼ばれるまでになったに違いない。
それを横から来た美冬が、簡単に奪った。
妬まれて当然だ。

「早く、別れなさい!!」
「ママさんのお気持ちはわかります!
でも…氷河さんと別れるのは、受け入れられません!ごめんなさい!」
「は?
なんなの…この女…」
真っ直ぐ見て思いを伝える美冬に、更に頭に血が上るママ。
持っていたパーティーバッグを振り上げ、美冬の頭に振り下ろした。
「う…っ…」
ちょうど金の部分が美冬の頭に刺さり、血が出てきたのだ。

「え…ちょっと…ヤバいわよ…!?」
ママ達もまさか、ここまでなると思っていなかったのだろう。
この状況に、かなり狼狽えている。

「何をやっている…」

「はっ!?若様!?」
あまりにも美冬の帰りが遅いので、氷河が心配し様子を見に来たのだ。
氷河は中でうずくまっている美冬を見て、思わず駆け寄る。

「美冬!!?」
美冬がゆっくり顔を上げた。
「あ…氷河…さ…」
「美冬!!?どうし…はっ…血が…なんで…!?」
美冬が頭を押さえていて、ゆっくり手を離すと手の平にべったり血がついていたのだ。
その瞬間、氷河の雰囲気がこれまでにない怒りに包まれた。

「金藤!!!」
するとトイレの外に控えていた金藤が、トイレに入ってきた。
「はい!美冬!?」
「早く救急車を呼べ!!!」
「はい!あ、でも!救急車を待つより、俺が今から連れて行った方が早いです!すぐに車を回しますので、美冬を連れて来てください!」

「わかった。美冬!すぐに病院に連れて行くからね!」
氷河は美冬を抱き上げ、外に向かった。
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