平凡な私の獣騎士団もふもふライフ4
「とはいえ白獣の贔屓がなければ、有力者のうちの一割の不満は、賛成派の数と逆転していただろうね」
そう茶化すように口にした直後、空気がピリッとした。
男たちの視線が、緊張を何気なく隠してジェドへと向けられる。発言した男も、黒いシルクハットの下から目を動かして彼を見た。
「――たとえ白獣の件がなかったとしても、俺はあらゆる手段を取ってリズを妻に迎えていた。二割りの不満を示した派閥に関しても、穏便に話し合って〝きちんと納得して〟頂けた」
それは先日まで、社交の場を騒がせていた件か。
男たちは、次に牽制されるのは自分かと怯えていた貴族たちを思い返した。まだ未練たらしく『グレイソン伯爵の妻に』と我儘を言っていた令嬢たちの父親も、娘共々社交の場で完全に心を折られていた。
「やれやれ、全く。君を敵に回すと本当に怖い」
シルクハットの男が、金の指輪がついた指先で鍔を挟み、口角を引き上げる。
「信頼するのはたった一握り。やすやすと身の内に他者を入れないところも、まるで白獣のようだ」
ジェドは、そちらについては答えなかった。
「敵に回らないことを祈っていますよ」
視線も向けずにそう告げる。それは、命が下れば斬ることを示していた。
「言っておくが、私ももちろん陛下の敵になるつもりはないよ」
そう茶化すように口にした直後、空気がピリッとした。
男たちの視線が、緊張を何気なく隠してジェドへと向けられる。発言した男も、黒いシルクハットの下から目を動かして彼を見た。
「――たとえ白獣の件がなかったとしても、俺はあらゆる手段を取ってリズを妻に迎えていた。二割りの不満を示した派閥に関しても、穏便に話し合って〝きちんと納得して〟頂けた」
それは先日まで、社交の場を騒がせていた件か。
男たちは、次に牽制されるのは自分かと怯えていた貴族たちを思い返した。まだ未練たらしく『グレイソン伯爵の妻に』と我儘を言っていた令嬢たちの父親も、娘共々社交の場で完全に心を折られていた。
「やれやれ、全く。君を敵に回すと本当に怖い」
シルクハットの男が、金の指輪がついた指先で鍔を挟み、口角を引き上げる。
「信頼するのはたった一握り。やすやすと身の内に他者を入れないところも、まるで白獣のようだ」
ジェドは、そちらについては答えなかった。
「敵に回らないことを祈っていますよ」
視線も向けずにそう告げる。それは、命が下れば斬ることを示していた。
「言っておくが、私ももちろん陛下の敵になるつもりはないよ」