平凡な私の獣騎士団もふもふライフ4
「あの子は、――あたしの娘さ」

それは驚く事実だった。

「あんたの言う通り、あたしの復讐は魔女狩りではなく、ただひたすらにあの子を殺した当時の国というものが許せなかったからさ」

「でも、どうして」

狼狽したリズに、魔女が唇が歪めるように引き上げる。

「魔力を持たない子は、人里に預けるのが決まりだった。でもあたしが未練を断ち切れず、〝魔女〟として会いにいってしまったのが悪かったんだ。……悪霊になった白獣の〝戦士〟とも知り合いだったよ」

だから魂を呼び出すことができたのだと、魔女は小さな声でつぶやいた。

アティーシャが領主と婚約者に語ったという言葉まで知っているのは、実際に見ていたからなのだろう。

「神子だったあの子は、気紛れに姿を現すあたしを母だと気づいた。全て分かったうえで『魔女さん、また来てくれて嬉しいわ』と笑ってあたしを迎えた」

アティーシャは、魔女を許したのだ。

捨てなければならない事情を受け止めて、そして特別な愛情を込めて『魔女さん』と呼んだことが想像された。

リズは胸が締め付けられた。

魔女は、母として悔やみ、そして報復しようとしているのだ。神子として大事にされるべき村から捨てられたと知った時は、身が引き裂かれる思いだっただろう。

『あたしが、あんたを助けてあげる』

そして恐らく、そうリズに言ったのは――。

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