平凡な私の獣騎士団もふもふライフ4
怖いことは何も起こらなくて、リズはそっと目を上げた。隣を見れば引き続きジェドがいてくれていて、安心してつられて微笑み返した。

見つめ合う視線だけで、胸の奥が熱く震える。少し前まですれちがっていた二人の心が、再び一つになったような穏やかさを覚えた。

その時、カルロが空の向こうを見やった。

気づいたジェドが目を走らせ、コーマックが背の毛を立てたエリーに触れる。

「エリーは『来る』と言っていますが、――うわっ」

言葉も言い終わらないうちに、エリーが慌ててコーマックを広間の外側へと押して寄せた。

金縛りでも解けたみたいに他の相棒獣も動き出し、空にいた相棒獣たちもトナーたちの驚きに応える余裕もなく左右に分かれた。

直後、雷鳴のような咆哮が東の空が響き渡った。

そこから、見事な二列編成を組んだ大型級の白獣たちが、音速の衝撃波を身にまとって流星のように向かってくる。

無騎獣による、遠慮を知らない驚異的な速度。

彼らは自身の飛行で大気を震わせ、来訪を知らしめるかのように吠える。存在だけで圧倒するその姿は、この世の光景とは思えなかった。

――荒らぶる神の番犬。

ずっと昔、そう呼ばれ恐れられていたことが思い出された。

飛来してきた白獣たちが、展望台の最上階へと突入した。ドゥッという重々しい着地音があり、強風に煽られたリズをジェドが抱えて支えた。

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