平凡な私の獣騎士団もふもふライフ4
「魔女さんっ」

駆け寄ったリズは、肩を掴もうとした手が空気を撫でてビクッとした。

自分の手をじっと見ていた魔女が、遅れて目を上げる。

「そんな顔をしないで。死なないわ、少し眠るだけだよ」

「眠る……?」

「あたしの身体は精霊みたいなもの。魔力でできているのよ。眠れば欠けた魔力も回復して、また自由に動けるようになるわ」

ホッと安心したら力が抜けた。リズの肩をジェドが抱いて支え、大丈夫だとなだめるように撫でながら魔女を見据える。

「目覚めたら、また繰り返すのか?」

「もう、何もしないわ」

魔女はジェドとリズを見、集まっているコーマックたちを眺め、それから白獣たちの向こうに見える王都の町並みに目を細めた。

「ほんとはね、あたしが怨んでいた〝国政〟なんて、とっくにないことくらい知っていたんだよ」

でも止まれなかったの、と小さく紡がれた。

彼女もまた、胸を焼き焦がす当時の想いをどうにもできなかったのだろう。あまりにも残酷で、そして悲しい歴史だったから。

「魔女狩りの歴史は隠蔽され、気づけば魔女はあたし一人しかいなかった。……信用ならないこの世だが、あんたのことを知ってもなお、全力で受け止めてくれる人間がいるんだってことが分かってホッとした」

リズの涙目を察知したのか、魔女が振り返る。そして歯を少し見せ強がった苦笑を返してきた。

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