平凡な私の獣騎士団もふもふライフ4
彼の両親にも、ジェドにも迷惑をかけたくなかったのだ。マナーだって猛勉強中の身だ、もっと頑張るべきなのではないか?

だが目を戻した途端、ジェドが柔らかく微笑みかけてきた。

「父上も母上も、そう言ってくれている。ひとまず休憩しよう」

「……はい」

特別な感情を浮かべた、彼の温かな笑みに胸が高鳴る。肩を抱くジェドの掌に自分の手を重ねたら、自分を追い詰める気持ちも溶けていった。

ゆっくりでいい。

ジェドも彼の両親の目も、リズにそう伝えてくれていた。ヴィクトルが使用人を呼んで、休憩するため屋敷の二階へと案内された。



しかし、その甘い空気もどこへやら。

「会いたくなかった」

待っている方がいると言われて入室した瞬間、ウザさを隠しもせず、ジェドが目の前にいるベルベネット子爵を一瞥する。

「ひどいですねー。お祝いのために駆け付けたのに」

ベルベネット子爵が、美麗にくすりと笑った。

彼は、亡霊事件のあったドラッド村の領主、サーチェス・ベルベネットだ。謎に惹かれ白獣も好きだという風変わりな美貌の紳士で……そして、ジェドとは一方的に相性が悪い。

おかげでジェドの機嫌は、急降下だ。しかしリズとしては、本物の恋人となってからの再会を嬉しくも思った。

「ご婚約おめでとうございます。プレゼントの花束もじさんせず、申し訳ない。これからもどうぞよろしく」

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