平凡な私の獣騎士団もふもふライフ4
そうリズが思い返していると、ジェドがふんっと鼻を鳴らし、ベルベネット子爵から手を離した。

「俺の独断、というわけじゃない。事情を知った町の者たちが『助けてあげてくれ』と言って、集めた募金を俺の元に届けに来た」

「おやおや、それはすごいですね」

ソファに腰を落ち着けるジェドを眺めつつ、ベルベネット子爵が襟元のお洒落なアスコット・タイを整え直す。

「ああ、天性の気質みたいなものだろうな。研修の見周りだけで、待ちの者にもすっかり好かれた。ああいう奴も、滅多にいない――だから俺は、領民の意思に応えてできる限りのことをした」

そんなことがあっただなんて、知らなかった。

リズは、胸に込み上げるモノを感じた。町の人たちの温かな笑顔。そして、ジェドがどんな風にシモンを見ているのかも。

出会った時とは全然違うシモンの、毎日楽しそうな笑顔が頭に浮かんだ。

彼が遠慮をしないでもいいように仕掛けたのは、ジェドだ。自分の子供みたいに叱りつけながら、彼を〝大人として見守ってもいる〟のだ。

「そういうところ、好きです」

恥じらいつつ、思った言葉をリズは伝えた。

ジェドが隣で、優雅な様子を一変させて咳込む。

「お前、ほんと俺の扱いがうまくなったよな……」

耳までほんのり赤くなった彼を前に、ベルベネット子爵が「これはこれは」と物珍しそうに見つめていた。

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