LOVESS
その時、店の扉がガラガラと開いて。
その人が入って来た瞬間。
店の空気が変わった。
「よぉ、成瀬」
その人は、凄く背が高くて。
顔も整っていて、素敵な人だなって目を奪われるのだけど。
纏っているその雰囲気とかで分かる。
この人、ヤクザだって。
「あ、二葉さん!
来てくれたんですか!」
成瀬はとても嬉しそうで。
ああ、この人が先程迄話題に出ていた、三咲さんのお兄さんの二葉さんなんだ。
にしても、ベビーフェイスな三咲さんとは全然似てない。
けっこう眼光が鋭いし。
「これ、祝儀」
そう言って、スーツの懐から取り出したその祝儀袋は、分厚い。
多分、百万くらいあるかな?
「つーか、喉渇いた。
まずビールか」
「あ、じゃあ、これどうぞ。
俺まだ口付けてないから」
成瀬は手に持っていた、中ジョッキを、その二葉さんに手渡している。
二葉さんはそれを受けとると、その生中を一気に飲み干した。
お酒強いなー、と思うと同時に、
先程の三咲さんの話ならば、この人車で来ているはず。
本当に、飲酒運転とかお構い無しなんだ。
「三咲、お前飲まないのか?」
二葉さんは、三咲さんの手にあるオレンジジュースのグラスを見ている。