音のないこの世界で

プロローグ

「ねー!この人まじですごくない!?」
「それな!Deer hornでしょ!?」
コンビニのレジで並んで待っていると雑誌コーナーで立ち読みをしている2人の女子高校生からそんな会話が聞こえた。
そして自慢じゃないが、そのDeer hornは僕の恋人だ。
今は同棲を始めて三年くらい経つ。
付き合い始めたのは高校生の時だ。
彼女との出会いは些細なものだったけど、出会ってからはとても楽しい毎日だった。
今、女子高生達が読んでいる雑誌に取り上げられたのは二度目だが一回目は二割くらい僕のおかげだと言いたい。
「また言われてるぞー?もっと自慢しろよ!お前の彼女!」
俺の後ろに並んでいた僕の友人にも女子高生たち会話が聞こえていたらしい。
「出来れば自分のことを自慢をしたいけどね」
僕は笑ってそう返事をした。
僕は人に自慢できるような仕事にはついてない。でも、この仕事に誇りを持っている。
「そーゆーお前の彼女とは最近どうなの?」
「え?俺か?俺はなー。今結婚の準備をしてる最中だぜ!」
と買うつもりなのであろう結婚雑誌を見せびらかすようにして言ってきた。
僕達の高校生活は今でも最高の思い出だ。
彼女と出会ったあの河川敷と『あの太陽』にも感謝している。
僕はずっと太陽は可哀想な星だと思っていたけど、彼女は『太陽はかっこいい』と言っていた。それは単純に見た目とかそういう話じゃなくてちゃんと意味のある理由だったのを今でも鮮明に覚えている。そのおかげか今の彼女がいると言っても過言ではない。
これはそんな僕らの物語だ。
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