音のないこの世界で
麗音を家まで送ろうとしたけど、また『すぐそこなので大丈夫です。』と言われた、まるで僕に家を見せたくないみたいに。言われるがまま僕は家に帰った。
家に帰ると母はソファで寝ていた。僕は静かに毛布をかけてから、夜ご飯の支度をした。
夜ご飯を作り終わっても母が起きる気配が全くないので、先にお風呂に入ることにした。
麗音の話で何か引っかかることがあったので、ずっと湯船に浸かりながら考えたが、結局分からなかった。
何分か経って、風呂から出ても母はまだ寝ていた。でも、さすがに起こさなきゃダメだと思い体を揺さぶって無理やり起こすことにした。
母が休みの日に昼寝をすることは特に珍しいことではないが、この時間まで寝てるのは初めてたった。余程疲れているのだろう。
「………あ、帰ってたのね。今何時?…………やっば!すぐご飯の準備するから待ってて!」
目を擦りながら母は目を覚ました。
「もう準備したから、早く食べよ?」
「…あら、ごめんなさいね。休みの日は私が作るって約束だったのに。」
「いいよ別に。疲れてるんでしょ?早く食べて、早くお風呂に入って、今日は早く寝な?片付けとかはやっておくからさ」
そう助言すると母は僕のことをぎゅっと抱きしめて耳元で俺があんまり聞きたくない言葉を囁いた。
「いつもごめんね。こんな辛い思いさせて……、母さんもっと頑張るから。」
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