冷徹御曹司の最愛を宿す~懐妊秘書は独占本能に絡めとられて~
同居するのは本当だが、具合が悪いと言うのは作り事。光江は今も元気に仕事をしている。
澪が光江に妊娠したと告げた時「結婚するのね!」と喜んでいたが、相手はいないと告げると電話口だが「そう」としょんぼりしているのがわかった。
あんなに澪の結婚を待ち望んでいたのだ。やっと願いが叶ったと思っただろう。だが光江は前向きで明るい性格の為すぐに「孫に会えるのが楽しみ」と言ってくれた。
光江の人柄には、澪も憧れていた。澪は生まれた時から父親がおらず、光江はずっとシングルマザーとして澪を育ててきた。
けれど、光江の明るさのおかげで、澪は寂しい想いをしたことはなかった。澪も光江と同じ道を選んでしまったが、そんな光江の背中を見てきたせいか、自分も頑張れるような気がしていた。
「社長には挨拶した?」
「いえ。これからです」
「そう。社長、神谷さんのこと気に入ってたから寂しいでしょうね」
そう言われ曖昧に頷いた。匠馬ともこれでお別れ。もう二度と会うことはないだろう。