冷徹御曹司の最愛を宿す~懐妊秘書は独占本能に絡めとられて~
第六章 運命に導かれて
澪がいなくなった。
愛されていたのは自分ではなかった。彼女が欲しかったのは、匠馬の家と地位……。澪も、そこら辺にいる女と同じだったということなのだろうか。
喪失感に押しつぶされそうで、匠馬はしばらく現実を受け止められなかった。
澪が噂で聞いたことは全て本当だ。従弟である景道(かげみち)が、匠馬を引きずり下ろそうと躍起になっている。そしてその採決は次回行われる取締役会で、実行されることになっていた。
ハッキリ言って今のままでは不利だ。無断キャンセルや口コミの件で役員全員が、匠馬は社長にふさわしくないのではと疑い始めている。
それに乗じ、このままでは本郷グループがつぶれると、景道が吹き込んでいるようだった。
「くそっ」
ドンッ! とデスクを激しく叩くと空虚を睨んだ。