冷徹御曹司の最愛を宿す~懐妊秘書は独占本能に絡めとられて~
光江は近くの縫製工場で働いていて、そこで澪のことが噂になっているようだった。
悪い男に騙されて妊娠したとか、相手が既婚者だったとか、あることないこと言われているらしい。
この前澪が役場に行ったときは、
「美人は恐ろしい」とか「高飛車だから罰が当たった」とか、あまりにもひどい言われように、そそくさと帰ってきた。
光江も澪も誰にも話していなかったが、産婦人科かどこかで澪を見かけた人が「神谷さんちの娘さんが戻ってきてる!」と誰かに言い、それから光の速さで広まったのだろうと推測している。
(落ち着いた東京に戻ろうかな。でもそうなれば社長に見つかる可能性も……)
「とにかく、誰が何と言おうと、お母さんは孫の誕生を楽しみにしてる。澪は今は自分のことだけ考えなさい」
ぴしゃりと言われ、澪はもぐもぐとしながら頷いた。
やっぱり光江には敵わない。自分も子供が落ち込んでいたら、こんなふうにできるだろうか。一緒になって泣いてしまいそうだが。母親とは、だんだんと強くなっていくものなのだろうか。