冷徹御曹司の最愛を宿す~懐妊秘書は独占本能に絡めとられて~
「たまちゃんも早くおばあちゃんに会いたいよねー?」
すると、澪のお腹をさすりながら、光江が呼びかけるように声をかけた。
「え? たまちゃん?」
「胎児名よ。今付けたの。こうやって呼びかけるといいのよ」
無邪気な笑顔でそう言う光江に、澪はぽかんとしていた。
「たーまちゃん。元気に生まれてくるのよ」
「ていうか、なんでたまちゃん」
呆れながらそう突っ込むも、澪の顔にはいつの間にか笑顔が浮かんでいた。ここに来て初めて笑った澪を見て、光江も安堵しているようだった。
◇◇◇
「こんちはー。澪いる?」
夏の昼下がり、澪が縁側でうとうとしていると、玄関から元気のいい声が聞こえた。
澪は大きなお腹を抱え玄関へと向かう。もう妊娠8か月。月日が経つのは早い。
澪は立ち上がるのも一苦労になっていた。それに最近やけにお腹が張り、そのせいで眠れないことが増えた。