冷徹御曹司の最愛を宿す~懐妊秘書は独占本能に絡めとられて~


「私こそ、あんな嘘をついて追い帰してしまって、すみません」
「いやいいんだ。全部俺が悪い」

澪は小さくかぶりを振り、そして足元を指さした。

「それより、見てください。あなたの子です」

澪と匠馬の視線は自然と生まれたばかりの我が子に向いていた。処置をされる娘は、小さくて可愛くて、愛の結晶とはこのことだろう。見ているだけで心が浄化されるようだった。

「可愛いですね」
「あぁ。澪、ありがとう。愛してる。もう離さない」

澪は匠馬の手を強く握った。


◇◇◇

翌日、母子手帳に分娩時間、二時間と記載されていることに澪は驚いていた。しかも、アメリカンな夫婦だと、助産師さんたちの間で噂されていることを知った。

無理もないかもしれない。こんな田舎の産婦人科の分娩室で「愛してる」と囁き、額にキスをする夫なんて、恐らく匠馬かおとぎ話の王子くらいしかいないだろうから。

しかもこの容姿だ。尚更女性スタッフの心に火をつけたに違いない。

特殊な状況だったとはいえ、思い返すと顔から火が出そうだ。


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