冷徹御曹司の最愛を宿す~懐妊秘書は独占本能に絡めとられて~


「可愛いな、美雨は」

出産から三日目。

匠馬はこの日も澪と子供を訪ねて病室へ来ていた。東京から秋田まで、どんなに頑張っても7時間はかかるのに、こうやって足しげく通っている。

子どもの名前は『美雨』とつけた。

匠馬と澪を結んだのは雨だと言ってもいい。雨の日に始まり、雨の日に再び二人を結び付けてくれた。雨のようにみんなに潤いを与えてほしい。そういう願いも込めた。

「匠馬さん、鼻の下伸びてますよ。それより仕事は大丈夫なんですか?」
「あぁ、大丈夫。澪と美雨に会うために、急いで終わらせてきた」

美雨にデレデレで、これがあの大企業の社長なのかと疑いたくなるような顔をしている。けれど澪もまた、そんな匠馬の隣で幸せを噛み締めていた。


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