冷徹御曹司の最愛を宿す~懐妊秘書は独占本能に絡めとられて~
社長の座を狙った争いは、匠馬が自分の力でもぎとったようだった。
いろいろ大変だったらしく、まさに骨肉の争いだったらしい。匠馬はあの無断キャンセルや口コミの件は、景道の仕業と睨み、証拠を集めそれを取締役会で突き付けたそうだ。
それ以外にも不正がいくつか発覚し、景道は会社を追われることになったとのこと。それを聞いてさすが匠馬だと思った。澪はずっと誠の仕業だとばかり思っていたが、匠馬は誠にそんな度胸はないと踏んでいたらしい。
「色々悪かった、澪」
「もういいですから」
「ネクストファーマとの縁談の件も知ってたんだろ? だから身を引いたんだよな」
「匠馬さんには社長でいてほしかったので」
「一瞬でも澪が財産目当てだと思った自分が恥ずかしいよ」
そう言って匠馬は頭を下げていた。
結局匠馬はネクストファーマの若林との結婚も断っていた。そんなもの利用しなくても、匠馬は自分の力で勝ち取ったのだ。
また匠馬とこうやって過ごせる日が来るとは夢にも思っていなかった。何度もこういう画を想像しては、ダメだダメと自分を諫めた夜は数えきれない。泣いてばかりのあの頃が嘘のようだ。