冷徹御曹司の最愛を宿す~懐妊秘書は独占本能に絡めとられて~


「澪、ありがとう。こんなかわいい子を産んでくれて」
「いえ、そんな」
「三人で幸せになろう。澪、結婚してほしい」

匠馬が手を取り、意志の強い目を向ける。もう意地を張ったり誤魔化したりしなくていい。匠馬に好きだと言っていいのだと思ったら嬉しくてたまらなかった。

「はい。よろしくお願いします」

その様子を、巡回にきていた看護師さんが、ニヤニヤしながら見ていたようだが、完全に二人の世界で、気づくよしもない。

「これ、つけてくれる?」
「え? いつの間に……」

しかも指輪まで用意されていて、匠馬らしいと思った。

「澪に似合うダイヤをカットしてもらった」

言いながら、澪の細い指に指輪をはめる。

「綺麗……ありがとうございます」
「澪、いつまで敬語のつもり? 君もすぐに本郷になるんだ」
「そうでした。あ、いや……そうだね」

言い直し、二人で顔を見合わせふふっと笑った。

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